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2006年03月08日
今回は少し毛色が違うと言いますか、キネティックノベルと言う新しい物語の表現形式のオープニングを作成させていただきました。元々ダウンロード販売によるものだったのですが、それをパッケージ版で店舗でも販売することになったためのムービー作成依頼です。
ocelotさんの『神曲奏界ポリフォニカ 1&2話 BOXエディション』、4月28日発売です。
臨場感と物語の舞台の表現方法、シナリオが『スクラップド・プリンセス』で人気の高い榊一郎先生なので、その根底となるテキスト表現がポイントになるだろう、と最初に考えました。
で、これはもうクライアントさんと直接打ち合わせて方向を決めるしかないだろうと日帰りで関西へ。
その結果、テキストは故意に可読性を損ない、読めたとしても謎めいた言葉を多用することで本編への興味を起こさせるやり方を採ることにしました。
『音楽もの』と言うジャンルであり、音楽記号や楽譜、キーボードのアニメーションなどで、はっきりそれとわかるような表現、精霊の世界であり、自然物と人工物が微妙に混じり合っている世界観を表現することを心がけました。
いつもの文法である、キャラ紹介+山場には違いないのですが、物語性が強いため、シナリオの流れに沿った展開の中でキャラ紹介が浮き過ぎないように注意しました。
正直なところ、これだけコンセプト説明が長いと言うのはそれだけ悩んだと言うことです。物語の世界観が圧倒的に豊かなので、それを2分少々のムービーでまとめるのは困難でした。制作者にあるまじきことですが、途中何度放り投げたいと思ったことか…作業量による肉体的疲労より、精神的疲労の方が大きかったです。
全データです。おしかけおさなづま3程度の分量ですね。スクフェスレベルのことをやろうとすると、作業量も作業期間も倍増してしまいますので、作業期間に見合った作業量をコンテの段階で配分しています。
まず、絵コンテと動画コンテを作成し、クライアントさんと構成について打ち合わせ。この段階でCGの順番や演出意図などの調整を行います。
何時もは動画コンテだけで済ませるのですが、今回は複雑な演出が多く、動画コンテだけでは説明しきれないと思ったので、絵コンテを作成しました。基本的にはCGの順番と、演出説明、歌詞の記載だけですが、所々、手描きでラフを入れてあります。殆ど記号なのであんまり役に立ってないかも知れませんが^^;
動画コンテは例によってAdobe Premiereです。
今回は自然物が多い、と言うのが最大の難点でした。通常の3Dソフトが最も苦手とする分野かも知れません。出来なくはないんですが、不自然さが際だったり無闇にモデリングに時間が掛かったりします。
そのため3Dソフト用プラグインも植物や地形作成用など色々な種類が出ていますが、今回は景観専用の3DソフトDigital Element WorldBuilder Proを使用しました。
コンポジットはAdobe After Effectsです。
このソフト、樹木などのジェネレータが極めて優秀なのですけど、レンダリング時間が半端じゃなく掛かります。
ノベル冒頭の森を駆け抜けていくイメージを元に作ったところですが、96枚レンダリングするのに70時間ほど掛かっています。かなり軽く作ったつもりなのですが…作り込んだらこんなものじゃ済まなかったでしょう。
よって、その他のシーンではなるべく静止画でWBから書き出し、AE上で合成しています。
途中2カ所で出てくるキーボードのアニメ-ションです。
2コマ撮りで、しかも鍵盤の上を踊るように大きく動くので、中割りが殆ど意味をなしませんから作画枚数は少なめです。作画は、毎度のことながらCelsys RETASシリーズにお世話になっております。
AEでの合成は、音楽の諧調に合わせて、かけ上がり部分に合わせたモーションなどに気を遣う他は、あまり問題はないのですが、肝心の鍵盤部分がごらんの通りAE上で合成してます。このため、鍵盤が光る部分は指の動きに(完璧に、とは行きませんが)同調させる必要があります。結果、コントロールするレイヤー枚数が数十枚に及びました。AEでこれほど力業を行うことは滅多にないのですが、それでも全部描くよりは作業的に楽です。
時間が許せば、たぶん3Dソフトで鍵盤の動きまで作っていたことでしょうね(苦笑
毎度のことながらのシルエットアニメ。お手軽アニメの代表ですね^^;
RETAS STYLOSで作画した後に塗りつぶして、色調補正などを行いながらのAE合成です。
2番目の画像はラストシーンのシルエットですが、手前の木々はWBで作っています。月を背景にしたシルエットアニメーション演出は、最初から考えていたことなんですけど、どんな演出にするかは迷いました。
月に向かって飛んでいく服なしコーティとか、自転車で月を背景にすっ飛んでいく少年フォロン君とか、(喧嘩を売ってるとしか思えない)演出も色々考えたのですが、結局のところ定番的な演出に落ち着きました。
前回のリリースノート公開時、After Effects使用者の方から『3Dとアニメーションの話題ばっかりで参考にならん』との声をいただきましたけども、ご覧の通り素材をAE上でコンポジットするだけなので、AEの難しい機能はあまり使ってません…^^;
それでも便利なことには違いない訳で、わざわざアニメーションを起こさなくても素材とAEの機能だけでそれっぽいシーンを作ってしまえる時には便利だと思います。
そんなシーンを二つほどご紹介。
レンズフレア以外は殆ど全てAE6.5(Pro版)以降のデフォルトプラグインと機能で作ってるはずです。3Dを使ってみたら、楽だったんですけど、凄く違和感が出てしまったので、2D素材とAEだけで作ることに。こっちの方が大変でした。
シーン毎にレンダリングしたファイルを並べて、スタッフクレジットや音量の調整などはここで行っています。特に今回、歌だけではなく炎のノイズ音や台詞が入っているので、音量バランスはクライアントさんのご意見を伺った上で慎重に調整しました。